2015年12月31日木曜日

2015レコオヤジこの一枚!

Kue Onde / Benjamin S.



年々、高騰していくインドネシアのレコードには興味がなくなっているが、ベニャミンだけは特別なのだ。

1995年8月初旬、独立50周年の大規模ダンドゥット・コンサート(通称:スマラク・ダンドゥット)に備え早々ジャカルタ入り。ブタウィ文化臭が漂う、JL.Jaksaにいつものように宿を取っていた。ある夜、知人と二人でグロドックのダンドゥット・ディスコに入り浸っていた。調子こいて朝帰りしてみると、宿のおばちゃんから「昨夜、ベニャミンがここにきてたのよ」どうやら小規模のコンサートをやったらしい。「マジで、だってそんな情報どこにもないし、だれもいってなかったよ」オイラは泣きそうにおばちゃんに返答した。まぁ、よくあることだ。「次には絶対みるから」とおばちゃんと話す。しかし次がなかった。オイラが帰国した9月にベニャミンは急死してしまう。何たる失禁、いや失態、もう二度とBang Benを観れないのか!悔やみに悔やんだ。インドネシア音楽人生で最大の汚点だった。そのことがトラウマになり、20年経過した現在でもべニャミンのレコだけは何とか集めている。




一応、ベニャミンのデビューは上記本にも記載され、本人も認めている「Si Jampang」という10吋だが、どうもあやしい。EP盤と10吋の発売年数の差異とかを検証してみないとわからないが。オイラには上記Mesra盤は「Si Jampang」より前ではないかと疑っている。こうしたVAものは、オリジナル盤に比べ軽視されるのがインドネシアだ。もちろん上記本には一切この盤の話は出てこない。

ベニャミンはデビュー前 、クラブ等で欧米のポップス、R&B、ブルース等を歌っていた。60年代初期。しかし目が出ず、誰もやってないガンバン・クロモン(以下GB)に目をつけた。そこから売れるのである。上記EP盤の一曲は、BenがGB着手する以前の臭いがするし、ジャケのイラストも異常に若すぎる。バックのOrkes Prima Nadaの演奏もどこか60年代初期のような.....ちなみにROSSYなる女性は後にBenと何枚か共演する女性歌手だ。彼女もジャケを見る限り、まだ痩せていている。何の確証もないが、オイラのベニャミン魂をかきたてられたEP盤であることは間違いない。こういう話はジャカルタにあるBenのギャラリーに行ってわかるだろうか。オイラ的にはBenのコレクターと話した方が話は早いような気がするが。いずれにしても、この盤の存在で来年目標ができたわけだ。しかし、ほんとに来年ジャカルタに行けるのか...トホホ.....

2015年12月28日月曜日

2015年中古インドネシア・カセットベスト10



①Layang Pungkasan / Wiwik Sumbogo


今年の収穫は何と言ってもインドネシアで一番好きな歌手、ウィウィ・スンボゴのカセットを何本か入手できたことだ。そういえば、彼女はその昔、P.ヴァインから発売さてたダンドゥットのコンピレに収録されていたんだよなぁ。またその昔、彼女がスマラン出身だというのでスマランまで会いに行ったこともあったなぁ、会えなかったけど。

しかしこのカセ、オリジナルかなぁ、怪しい。ジャケデザイン的には90年代初頭ぽいのに、内容は80年代だろう。盤権移譲して再発なんでは...まぁ、いずれにしても素晴らしいアルバムだ。ウィウィの頬杖ジャケもいい。

「Tembang Jawa Cantik」(かわいいジャワの歌)と言うことだが、本当にウィウィの声が可愛い。優美なクロンチョン ・アレンジ(時折、チープなキーボードも入るがこれがまたいい)が大半を占めるナイスなバック陣、オイラが今まで聴いて来た彼女のアルバムでは最高峰だろう。演奏者のクレジットがないのが残念だ。もう一本、P2SC時代のカセも入手したが(どこにあるか探せない)あのカセも素晴らしかった。


② Mesam-Mesem / Sumiyati


 東ジャワ、バニュワンギ、クンダン・クンプルの女王スミヤティのロカナンタ録音カセ。知らなかった。何が楽しいかって、バックのO.M. KENDHANG  KEMPUL表記が示す通り、完全にダンドゥット・ナイズされている。今でこそ、普通だけど。これほどナイスなO.M.臭が漂うクンダン・クンプルのカセは聴いたことがない。ギターがめちゃカッコいい。スミヤティの歌も脂がのってるし。こんなカセが国営レーベルから出ていたんだから、スハルト政権とはいえ、いい時代だよなぁ。クンダン・クンプルの帝王?Arif M.も一曲参加。


③ Luntang Lantung /  Gambang Kromong Kumala Sakit






















四半世紀以上に及ぶインドネシア音楽人生に老いて、今年ほどガンバン・クロモンのカセを聴いた年はなかった。ピンキリ、いや、だから楽しいのだ。ベニャミンとも交流があり、数々の名曲を世に送り出してきた、JOKO S.率いるこのカセ。いや~笑わせてもらった。2曲目の「Jali Jali 135juta」は最高!ロマ・イラマの「 135juta」のカバーだ。あのメッセージ色の強い曲を、こなんにだるいアレンジで、しかも、どこかザンジバルのターラブ風に。インドネシア人にはたわいないカバーだろうけど、特にロマ信者とかね。このセンスは大好き。JOKO Sの足跡を知る上でも貴重なカセだ。


④ Makan Hati / Rita Sugiarto & Jacky Zymah





















今年5月、オイラが最も敬愛するダンドゥット・アーティスト、マラ・カルマが逝ってしまった。ダンドゥット界の筒美京平、いやオイラにはそれ以上の存在だった。彼は、ソロと平行してこの二人のオルケス、O.M.Jacta Groupにも参加していた。本カセットではアレンジャーだ。切れ味のあるギター、幅のあるアレンジ、本作を聴くとその後、確固たる地位を築いて行くスタートと言える音源が詰まっている。20年以上前、エルフィ来日公演で彼の姿を見た切り、というのが何とも情けない。きちんと話をしておくんだったと、このカセを聴き後悔する2015年だった。


⑤ Mpok Lilis Jaipongan / lilis Suryani & Iyong


 70年代末と思われるカセ。さすがにリリスもおばさん風のジャケだ。ポップスンダとジャイポンの融合作としては名作だろう。時代的にまだチープなシンセに頼らないポップ・スンダ風演奏とコロコロと転がるようなグンダンのジャイポン臭。二人のDuetは時折、ベニャミン&イダ・ロヤニを彷彿させる。クリーム「Sunshine Of Your Love」風なギターリフB5 Pesta Jaipong / Iyong が秀逸!


⑥ Orkes Melayu Delima






















初めて知るオルケスのカセ。A-1「Batik Pekalongan」はエルフィ&マンシュールもカバーした名曲。
ジャワ島北岸の町のバティックを歌った曲だ。果たしてこれがオリジナルなのか....IdrusHasniとDuetするIda Sanjyayaは後にダンドゥット歌手として少し成功した彼女だろう。OM時代の良質な部分を残した演奏で、もしかしたらレコードがあるかもしれない。複数の歌手の音源を収録。ナイスなオルケスだ。ちなみにリーダーのMONO SANJAYAはIDAの旦那かしら....

⑧ Jamu Gendong / Dariah






















タルリン界の女王DariahがHajahを名乗っていないカセは初めて見た。つまりこの時点ではメッカ巡礼に行っていないということか....さすがにジャケが若い。細身で初々しさも残る。あのふてぶてしさがないのは少しさびしいが。バックがOMを務めている通り、ほとんどタルリン・ダンドゥトの世界だ。まだこの時期(70年代後半?)はタルリン・ダンドゥットが試行錯誤していたかのような音が聞こえてくる。


⑨ Jauh Sudah / O.K.Swadesi





















まず、ジャケのイラストが素晴らしい。オーソドックスなクロンチョンながらもスタンダードなナンバーは一切やっていない。フルートではなくスリンを使用しているのもオイラ好みだ。ヴィブラートを効かせたSudarmoのヴォーカルもナイス。珍しく、ミュージシャンのクレジットもあり、カセット時代のナイスなクロンチョン ・アルバムをさがすのにも役に立つ。

➉ Pop Sunda Vol.2 Bersama Band De Sonic & Band Estika





















これは長年探していたカセ。ヘティ・クス・エンダンがまだHetty Kusmadewiを名乗っていた時代のポップ・スンダ。当時(70年代後半?)人気のあったMus D.S.とコラボした作品。バンド演奏もナイスだが、ヘティも若い。ジャイポンの名手タティ・サレ(ジャケ写上)の快演もうれしい。


今年も約60本以上の中古インドネシア・カセットを聴いてきたが、抜け、劣化に耐えながらも何とか凌いだ。 カセット時代にしかありえない音作り、時代の臭いを大いに感じさせてもらった。数々の名盤、迷盤を提供してくださったプランテーション・レコードには本当に感謝は尽きない。また、来年もお願いしたい。

2015年12月26日土曜日

2015 レコオヤジ・ベスト・アルバム



例年通り、よく聴いた順。アジア歌謡の面白さが、確実にインドネシア、タイ、マレーシアからカンボジア、ベトナム、ミャンマーあたりに移行しているのを実感した年だった。先述した3つの国からはオイラの嗜好を満たしてくれる快音達は今年、聴こえてこなかった。

熱心に聴いて来たギリシャやトルコも同様だ。「わるくはないけど」あたりで止まってしまったアルバムがいくつか、という状況だった。

一方で、全く期待していなかったアフリカものがダントツに面白い年だった。 

①SOKUN NISA & PEAK MI / KAL KHNHOM NOV KMENG

今年の収穫は何と言ってもカンボジアの女性歌手ソークン・ニサとの出会いだろう。オイラ的にはアジアでNO1の歌手だと思っている。とどのつまり、アジア歌謡は歌手なのだ。いつの時代もそうだった。残念ながら、ソロ・アルバムというスタイルがカンボジアにはない(稀にあるが)以上、VAものCDやMVを片端からYOUTUBEで観るしかないのだが、東名汁出っ放しの彼女はこれからも追っかけるしかない。

 

②FEMI OORUN SOLAR / GRACE.OORE OFE

 


次作DIVINE LEVELも次のMY TIMEも聴いたけど、ちょっと後退している気がした。やはり本作がダントツでしょう。


AIDA SAMB / SARABAA         ④ADIOUZA / LI MA DOON

ヴィヴィアンなんてクソくらえ的なンバラ女子最高でした!


 

⑤MINYESHU / BLACK INK ⑥THOMAS MAPFUMO & THE BLACK UNLIMITED / DANGER  ZONE

 

   エチオピア系では⑤が一番面白かった。⑥のマプフーモ、ムトゥクジ同様、チムレンガオヤジ魂健在で嬉しかった。もう、ライヴ見れないのかしら..

 

⑦JACKIE OATES / THE SPYGRASS & THE HERRINGBONE

 

 トラッドは彼女しか聴かない。遂に顔前面ジャケに踏み切ってしまったが、容姿とは裏腹にエロ・オヤジワールド音楽ファンに、常に東名汁を醸し出させてくれる美声、濃ゆい音楽を聴いているオイラには本当に癒される女子。

PALENQUE LA PAPAYERA / RAMON EN PALENQUE

⑨ DELE ABIODUN / LAI SE LAI RO, DAWA LOHUN BABA

V.A. / HIGHLIFE ON THE MOVE

 





⑧カリブもので一番聴いた。もう少し歌が入っていたらもっと楽しかったのに。⑨は知りませんでした。日本でも出ていたのね、レコが。


実は今年一番よく(昨年から)聴いたのがくるり「THE PIER」と大滝詠一のNIAGARA MOON 40th Anniversary...だった。何せ77年のナイアガラ・ファーストコンサートに行った(高2の時)身なのでLIVE音源のCD化は感慨深いものがあった。オヤジレコードでも一部UPしているけど。



今年も素晴らしい音楽に出逢えた。エル・スールレコーズとエル・スールオヤジーズに感謝。 

 

2015年12月15日火曜日

<津田先生以来、再びエル・スールオヤジーズ突撃隊>

今年はトルコのいいCDがないなぁ、と思っていたら年末になってAlaturka Recordsのコンサート。これは絶対行かねばと思い行ってきた。ツイッター上でオヤジーズとのやりとりで、二人の看板美人歌手、Yaprak SayarとHamide Uysalが来ないのはわかっていたが、..

何でもAlaturka RecordsのスポンサーにTurkish Airlinesがついたようで、世界の各国で精力的にコンサートをやっているようだ。アンプラグドな楽器編成ながらもトルコのクラシカルな曲を力強く&優雅に聴かせてくれた素晴らしいコンサートだった。月曜なのに無料ということもあってか、8割くらいの入り。まぁ、トルコ好きな人達だろうけどね。このレーベルのコンサートと知って来たのは、おそらくエル・スールオヤジーズだけだろう。だってCDを扱っていたのは、エル・スールレコーズだけだもん。

こういう無料の文化交流的(当然ながら日本の歌手、三味線、尺八他の演奏者も登場)なコンサートは、ガードが甘い。オイラは最初からCDにサインをしてもらうつもりでいた。つまり、コンサート終了後の楽屋突入を考えていた。コンサートが始まる前に、トルコ航空東京支社長の挨拶。派手なネクタイで笑ったが、「コイツだ」と思った。この人に話をつけてサインをもらえるように頼んでみよう。コンサートの第一部が終わり、休憩。あの派手なネクタイを探し、拙い英語で話をすると秘書みたいな人に「私達はこの場所を提供しただけだから、あそこにいるステージ・マネージャーに聞いてみては」と日本語で言われ、すっ飛んで、そのステージ・マネージャーの所へ。CDを見せ、「どうしてもサインをもらいたい」と嘆願。「では終了後に楽屋へ来てください」と快諾してくれた。全て日本語だった。コンサート終了後、その人に案内され楽屋へ...

着替えを待ち、まずは男性陣の楽屋へ。トルコオヤジ臭漂う心地よい空間。クラリネットのおっちゃんが、明るく対応してくれたおかげで、いろんな人にサインをもらい握手。楽しい時間だった。そして、ロビーで女性陣 へ。まぁ、正直、おばさん達ばかりだけど興奮した。オイラ達がYaprak Sayarと妄想していたGUL YAZICIさん、美人だったなぁ。今回のコンサートで一番のお気に入り歌手のESMA  BASBUGさんと握手できたし、M.DOGAN DIKMENさんと肩を組んでパチリできたし、いや、ちと尻に触れたかも....最後はKALANから出た新作CDをもらって(オイラの分がなかったが..)しまうおまけ付。さすが、エル・スールオヤジーズ突入隊だぜ!

で、当然ながら新橋で一杯やる。男性陣の歌唱力が素晴らしかったこと、フィリピン・ジョーが来年のエル・スール新年会、三線で月亭課長をやるかもしれないという話、etc..オヤジーズの反省会も盛り上がった。月曜からオヤジーズはエンジン全開。結局、昨夜の Alaturka Recordsコンサート、ブエナ・ビスタのトルコ版かもと話は落ち着いて散会。お二人ともお疲れ様でした。