2015年1月12日月曜日

ダンドゥット・コンサートを体験



3月号の「総括 94年インドネシア音楽シーン」及び「海外ニュース」でT氏が報告されていた94年大晦日のロマ・イラマのコンサートを体験してきた。タマン・ミニ内に作られた特設ステージ前に集まった大観衆を見て「ロマ・イラマ今なお健在なり」の現状をまざまざと見せつけられた感じだった。

22時過ぎから登場した彼のステージは「ヘイ・アパカバール」から最近のアルバム「ラナ・ドゥカ」「シファナ」からの曲を中心に新曲「ストレス」をおりまぜ、重量感のあるソネタ・グループのバックと一体となり怒涛のごとく展開し、ステージ横でビデオを撮る僕の手もさすがにこの状況を目の前にして震えが止まらなかった。特に新曲である「ストレス」はカセットよりも何倍もの迫力ある演奏力で圧倒された次第。

途中、ロマを含むソネタをバックに最近御無沙汰のインタン・アリとヌル・ハリマが(0時を過ぎ)登場。インタン・アリ(なんと太ったことか)は、本家カメリア・マリクを揺さぶる「リンドゥ・ブラッド」とロマのアルバム「シファナ」でインドの大歌手ラター・マンゲシュカールも取り上げていた「マワール・メラ」他を熱唱し、まだまだ歌唱力が衰えてないことを証明してみせた。もう一人のヌル・ハリマは自らのヒット曲「ジャヌール・クニン」とエルフィの「スンガジャ」の2曲を披露。特に「ジャヌール・クニン」という曲は、僕がインドネシア滞在時に見たライブ(ダンドゥット・ディスコも含め)で必ずとりあげられていた曲で、94年にファザル・ダスが送り出した曲の中でもとりわけヒットした曲ではないだろうか。そのことを本人に会った時に確認しようと思ったのだが、舞い上がってしまい聞きそこねてしまった。

ヌル・ハリマが終了後、1時近くなりお馴染の「インシャラ」を出演者総出で大合唱、無事何事もなくフィナーレを迎えた。個人的には日本公演も体験し、クアラルンプールでのライヴを収録した「ライヴ・ショウ」のカセットも愛聴し心の準備はできていたのだが、10万人の大観衆の熱気とロマ&ソネタが放つ歌とサウンドの強烈な磁力のようなものに身体も心も支配されていたかのようなコンサートだった。

その興奮も冷め止まぬ10時間後、同じタマン・ミニ内にある野外ステージに今度はリタ・スギアルトのライヴに出向いた。元旦ということもあってか、これ以上入場するのは無理というくらいの観客で埋め尽くされ一触即発のムードが漂うなかでのコンサートだった。前座で出たミルナワティもさすがにこの雰囲気には嫌気がさしていたようで、その興奮はリタの出番で頂点を迎え、軍の人(銃を所有)の警備が手薄になった後半部などは何が起こってもおかしくない状態だった。

そんな中、リタのステージは安くない入場料を払った大観衆の期待を裏切らない素晴らしいできだった。既にカセットで証明済みの歌唱力はライヴでも健在で、特に「パチャール・ドゥニア・アクヒラット」は他のライヴでもいろいろな歌手が取り上げていたが、当人の歌ということを除いても格段の差があった。これ程の本格派はエルフィ以外には考えられないが、T氏が「総括」の中でふれていたテレビを見てちょっと心配している一人である(もっと心配なのはヘルリナ・エフェンディだが)。

ロマ、リタ以外には、前後するが12月18日にスラバヤでイイス・アリスカ、25日にタマン・ミニでケンデデス、プライベートであるが、ロマの親戚すじにあたるカリド・カリム率いるカリーザの練習風景も覗いてきた。今が旬のエフィ・タマラ、イッケ・ヌルジャナ、フェティ・フェラ、リリス・カルリナといった人達は日程が合わず涙をのんだ。

ここでお知らせがある。東京ワールド・ミュージック内にダンドゥットを中心にインドネシア音楽の情報交換を行うサークル「マラム・インドネシア」を作り活動している。既にA4紙2枚の簡単な情報誌を季刊で発行する傍ら「LAGI-LAGI-DANGDUT」と題したダンドゥット・パーティ、「ワルジナをもっと知ろう」「地方ポップスを楽しもう」「SP盤で知る50年代のポップス」他様々な形でのレコード・コンサートも主催してきた。興味のある方は東京ワールド・ミュージック・クラブSまで(連絡先はペーニャス参照)。1995年「ラティーナ」誌5月号「オピニオン」に投稿。



トホホ...90年代、オイラは音楽雑誌への投稿魔だったのか...約20年前のことだが、いま読み返すとちょっと面白い。個人名はアルファベットにした。写真は当時、使われていない。今回新たに添付した。もっといい写真があったと思うが、何せ20年前だから...

「T氏が「総括」の中でふれていたテレビを見てちょっと心配している一人である」の部分、よくわからい。多分、リタ・スギアルトのお子さんが亡くなったので、彼女を心配しているのではないか。

イッケ・ヌルジャナ、フェティ・フェラ、リリス・カルリナはスラバヤで日程が合わず見損なったのを覚えている。

2015年1月10日土曜日

エル・スールレコーズ隅々見聞録 4

 
 
1/9日、結局、エルスールがOPENしたのは17:20分だった。店長、お風邪をめしていますた。
 
取り置きをしていたアルジェリアの大好きな歌手AIT MENGUELLET(左下)を取りに行ったのだが、意外な発見物があって、約50分待って入店した甲斐があった。
 
TTM(右下)はテティ・スパンガット、マミエッ・プラシトリスミ、トゥティ・マルヤティの3人による熟女クロンチョン・アルバム。TUTI MARYATI / ALBUM KERONCONG ABADI VOL.1はナイスなアルバムだったし。ジャケもいいんだよなぁ、オイラ、クバヤ着た熟女大好きだからね。まぁ、知られた曲が多いけど。オイラが注目したのはKoko Tholeが作曲、アレンジャーで参加していること。インドネシア音楽ファンには90年代~00年代初頭までポップ・ジャワの良質なアルバムを発表していたことでも知られていた人物。その後、音沙汰なしだったが、たまたまyoutubeで観たインドネシアTV番組 “グビャール・クロンチョン”(TVRI)の動画で彼の演奏(キーボードだったかな)を見て、「お、まだ頑張ってるやん、アルバムださんか!」と何年も思っていた。本作では2曲で参加。8曲目の″Keroncong Goyang"は彼らしい曲だ。ほか、アレンジャーは2人。歌手の歌唱力は申し分ないから、こういう知られた曲のアルバムはアレンジャー次第、まずまずの出来だと思う。
 
Mizikopeyi(上)はLIVE DVDで、Tony Chasseurと Thierry (Piano)によるjazz créole Big Bandだ。ビギンもあればチ・エミールやユジーヌ・モナの曲を歌ったBeleな曲もある。スタジオ盤があるのかしらないが、統率のとれたBig Bandのライブは楽しい。店長も言っていたが、Tony Chasseurが時折、ティト・ロドリゲスに見えるのも面白い。しかし、Tony Chasseur歌うまくなったなぁ、MALAVOI日本公演の時は、「ズーク界の貴公子」ナヨナヨ系だったけど、オヤジになって魅力が増した。ポスト・ラルフ・タマールと言っても過言ではない。ボーナスでMV付。
 
 
 
 
さんざん迷ってパスしたのがコイツ。2010作(右)はよかったんだけどなぁ。まず、ジャケがいや。なんちゃってプリンスというか、下品というか。1曲目のカダンスみたいな曲は笑い、MALAVOI風の曲もあったりもしたけど、決め手になる曲がなかったのが残念。次作に期待したい。
 
やっぱりAIT MENGUELLETが一番いいってことよ。
 
 
 

2015年1月2日金曜日

2014年中古インドネシア・カセットベスト10



2014年も沢山のインドネシア中古カセットを聴いた。まずはプランテーション店長に感謝。まだまだどんな作品があったのかは未知の世界だが、本年もプランテーション店長には面白い発掘をお願いしたい。

①O.M.SINAR DELI(左順)

レコードが少なく、幻の歌手と日本のインドネシア音楽ファンからは言われているEma Gangga。彼女が7曲も歌っているという珍盤。ジャケでヴァイオリンを弾いているのが彼女だろうか。プランテーション店長も言っていたが、ムラユ音楽を通り越してインド洋まで通じているような音展開と歌。インドネシア音楽の深層に触れて身震いした。

②POP MELAYU SINAR KUMALA

CD化されたロカナンタ作品が入荷したりと、嬉しい2014年だったが、既に音源としては知られていたそれらの作品より、本作には驚かされた。ポップ・ムラユと表記しておきながらも演奏の方はかなりラウンジ・テイストを収めた16曲。自らの楽曲をここまで違ったアレンジで聴かせるグループも珍しい。すでにイダ・ライラは在籍してないがYenny Tofanyが歌う”Keagungan Tuhan"は出色の出来栄えだ。

③HEI ! HEI ! KETEMU LAGI / O.M.NBARA

はじめて知るO.M.でリーダーのNAJEEB.B.という人も全く知らない。破天荒なギターのカッティング他、およそオイラが知らない荒削りなダンドゥットを展開する。70年代後半だろうか。このO.Mは今後も要チェックだろう!

④IDA ROYANI / HIT ALBUM

まさか、大好きなイダ・ロヤニが「ナショナルの歌」を歌っていたとは、驚愕した。
♪Berseri National Bercahaya National Radio Televisi Dan segalanya National♪...合弁会社のテーマ曲だったんだろうなぁ。当時この曲を聴いた邦人は覚えているだろうか...ComposerはA.RYANTOだ。

⑤WALJINAH / POP JAWA

2014年に入手したワルジナのカセットではこれが一番。100本以上もカセット持っていても、このカセットには出会ったことがない。NAGA KEMBARなんてレーベル初めて知ったし。IS HARYANTOのアレンジが摩訶不思議。この人、こんなアレンジもするんだと妙に感心してしまった。

⑥WIWI SUMBOGO / APANE DONG

これまた、オイラの大好きなインドネシアの歌手、ウイウイ・スンボゴのカセットだけど、実はアルバム内に収められてるワルジナさんのダンドゥットが絶品。歌手名が全くなく、聞き逃すところだった。こういういい加減さには慣れてるけどね。表題曲”APANE DONG”はアパニャ・ドンのジャワ語ダンドゥット・バージョン。ウイウイの歌も悪くないんだけど、ワルジナさんにはかなわない。

⑦ADIS S.T.SATI SAWIR S.T.MUDO / Aneka Saluang Pop

ミナンカバウのSaluang(かすれ系の竹笛)の存在を知ったのは、90年代初頭。すでにダンドゥット化されたSaluang Dangdutのカセットが氾濫していた。パダンのカセット屋を覗いてもそれは同じ状況だった。本作はSaluangがダンドゥット化される以前のポップ・ミュージックの中のSaluangが聴ける貴重なカセットだと思う。タルリンがそうであったように、ダンドゥット化される以前の地方ポップスの面白さがこの作品には充満している。

⑧GAMBANG KROMONG NAGA MUSTIKA / SEPAK BOLA

2014年はそこそこガンバン・クロモンのカセットを聴いたが、一歩抜きんでたのが本作だ。大好きなNAGA MUSTIKAというのもあるけど、ポップでありつつ、濃厚な世界も垣間見れるナイスな作品だ。表題曲がサッカーネタなのもいい

⑨TITIEK PUSPA / OTOBIOGRAFI DENGAN 18 LAGU HITNYA

ティティック・プスパのヒット曲をMus Mualim Orchestraのアレンジで聴かせる好盤。そもそも楽曲がいいからOrchestraアレンジでもそん色ない。いや、新しい魅力が加味された感じも大いにある。CD化してほしいが、マスターは当然ないだろうなぁ。

➉O.M.OMEGA

はっきり言ってジャケットです。エルフィがこんなグラサンかけたジャケ見たの初めてなので....

②③④⑤⑥⑨については、オヤジレコードで聴くことができます。興味のある方はどうぞ。
https://www.youtube.com/channel/UCKJJ2LkFt76EWwby2EkjgrQ