2016年8月22日月曜日

恋の汚レコジャケ

 たじこ(多司子)に出逢ったのは、30年以上前。双方とも羽田空港に務めていた。オイラは、航空機を誘導する地上サービスの会社、彼女は空港内にある売店で働いていた。オイラがタバコを買いに行く度に少しづつ会話をし、仲良くなる。そしていつしか付き合うようになる。

たじこは、KORGIS「Everybody's Got To Learn Sometime」と言う曲が好きだった。オイラが「BEST盤のレコードならもっているよ」と話すと、身体を震わせて喜んだ。「ホント!今度あたしの部屋で一緒に聴こうよ!」と...

たじこの部屋は、エスニック柄のカーテンがオイラ好みではなかった以外、すっきりとしたオシャレな部屋だった。まだ残暑厳しいのに、灯を消し、キャンドルを囲みワインを酌み交わし、このレコードを聴く。そして二人は結ばれた....

たじこは言った。「今日の記念にジャケットに日付とあたしの名前をかいていい?」オイラは最初、レコジャケを汚されるのに躊躇したが、既にたじこは、サインペンで名前と日付を書き始めていた。「これで、このレコードを見るたびに、あたしのことを思い出すね。今度、このジャケットの真似を二人りでしようね!」と、どこまでも明るかった。しかし、たじことの関係は長くは続かなかった。そして彼女は会社を辞めてしまった。

たじこと別れて数年経ち、会社の先輩が週刊大衆をオイラに渡しこう言った。「グラビア・ページに出ている女、お前が昔付き合っていた女じゃねぇえの」と。ページをめくりオイラは自分の目を疑った。そこには間違いなく、あのたじこが上半身裸でオヤジと戯れていた。

この汚レコジャケを見る度に、青春の思い出よりも、週刊大衆のあのページを思い出してしまう。ある意味、恋の汚レコジャケだろうけども....

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