昨今、インドネシアのレコードが高騰しているようだが、オイラはあまり気にしなくなってきた。なぜならインドネシアのポピュラー音楽はカセット時代のほうが抜群に面白かったからだ。70年代、レコードからカセットに移行して爆発的に普及したのは、ソフトの手軽さもあったが、レコードに比べ、レコード会社もコストがかからないカセットの普及で百花繚乱のレーベルも登場した。特に地方ポップスは顕著であった。中には「一発当ててやろう」なんて製作者の魂胆見え見えの作品も多くあったであろう。
現れては消えゆくカセット・レーベルにあって、一つの異端なレーベルがP2SCであった。何せインドネシアでも有名なクロンチョン歌手のワルジナ(何度も言うがワルジーナのカタカナ表記はおかしい)にレゲエ・アレンジのポップ・ジャワを歌わせてしまうのだから。このカセットが制作されたと思われる80年代初頭、確かに世間はレゲエに向いていたかもしれないが、インドネシアではそれほどの情報もなかったであろうし、なんでワルジナなのか、その発想がユニークである。ワルジナもワルジナで、そういう企画に「私はクロンチョン歌手なんだからこんなアレンジの曲は歌えない」なんて全く言わないところが懐の深さだ。そして、これまたすごいのが、そのカセットをCD化してしまう日本人。Sublime Frequenciesの30年先を行っていたのだ。このレーベルでのワルジナの異端企画はこれで終わりではなかった。クロンチョン・ダンドゥットのナイスなカセットもリリースしている。もちろんそんな企画ばかりではレーベルは続かないだろう。
インドネシアに行くたびにこのレーベルのカセットを探してきたが、ほとんど見つからない。他にどんな作品が出ているのか、ムチャクチャ気になる。もしかしたら「ケケ・レゲエ」を超える作品があるかもしれない。そう思うと今すぐにでもインドネシアに行ってカセット探しをしたくなるのである。
25年以上もインドネシアのカセットを買い続けているのに、このレーベルのカセットは上記のワルジナを合わせてもたったの6本。オイラにはほんとに幻のレーベルである。早くに倒産したのか、わからないが、いずれにしてもなんとか一本でも多く入手したい。
これだけ、カセットのラベルがあるのならそれなりの本数は出ていたと思うのだが...